北麓からの富士

 冬の安曇野での写真交流展「十人十色」。2020年は19名の写真家が参加しました。この交流展では同時に5人の写真家が5部屋に分かれてそれぞれの作品展示をすることになっています。今年は最終第4会期の第一室。会場であるギャラリー・レクランは、その構造が回廊式のため、第1室がお客様を招き入れる玄関となります。そこで今回は奮発し、1.2m×0.9mの大型写真を2枚、入口に立って最初に目に入る位置に展示することにしました。ここに紹介したのがその2枚です。

現在この2作品は富士宮市の”富士山一望展望風呂の宿”「かめや旅館」に展示させていただいております。富士宮にお泊まりの際にはぜひご利用ください。

紅富士

 「紅富士」とは、冬、雪をまとった富士山が、朝日や夕日を受けて赤く染まった様子をいいます。夏のそれは「赤富士」。「赤富士」は夏の季語だそうですが、「紅富士」は今のところ季語とはされていないようです。

 第1室に写真を展示させていただくことになったとき、題材を「富士山」にすること、そしてギャラリーに来ていただいた方が最初に目にするこの壁に大きな紅富士の写真を飾ルことを決めました。そしてその写真は、できることなら最近購入した最新鋭のフルサイズミラーレス高画素機「α7RⅣ」で撮ったものにした買った。そう思って昨年の晩秋から暮れにかけて何度か北麓に足を運び撮影したのが下の写真です。

 色の良い「紅富士」は条件が揃わなければ見られません。この日は太陽が直接富士を照らす前、東の空の色が山肌に映ってまずまずの色になりました。でもそのままでは物足りないので、WBを「日陰」相当に調整して赤さを増しています。

 なんだインチキじゃないかという声も上がりそうです。でも昔のフイルムにはもっと派手な発色をするものがあったのです。それをこの写真のような条件で使うと、期待以上に深紅に写ることもしばしばでした。そんな歪んだ経験が私の期待色に影響してしまっていることは否定しません。

西湖 根場浜からの富士

 青木ヶ原樹海の地形を創った貞観の噴火で埋まった「剗の海」という大きな湖の東の端が西湖です。対岸に見えるのは湖を埋めた溶岩そのもの。湖面に薄く漂うのは蒸気霧。相対的に温かい水面の上に 冷たい空気が流れ込んでできる霧ですが、溶岩がここに流れ込んだときには、湖の水が沸騰し、熱々の蒸気が辺り一面立ち昇っていたことでしょう。

 上の写真はシノゴと呼ばれる4×5インチサイズのシートフイルムで20年以上前に撮影したものです。今回の展示では、シノゴフイルムで撮影した写真を最新型の高画素のデジタルカメラで撮影した写真の横にどうしても並べたかったのです。

 紅富士と並べてバランスの良く決まる写真があまりなく、結局、太陽モロ入れの大逆光という難しい画像を選んでしまいました。これを大型フイルムの良さを感じていただけるようなプリントに仕上げるべく、スキャンデータをいじくりまわし、写真工房・道の石田さんの手も煩わし・・・と、大変苦労しました。

 さて、その苦労の結果は報われたでしょうか・・・。